買い物や通勤に普段から自動車を使っている皆さん、雪の予報が出るとスタッドレスタイヤに履き替えますよね。
愛車が4WDの方は当たり前のように4輪すべて交換する事と思いますが、2輪駆動車のオーナーさんたちはいかがでしょうか?
4輪ぜんぶ交換するのは大変だし、とりあえず駆動輪だけスタッドレス履いとけば大丈夫だろう。
おそらくこんな考えの方もいらっしゃると思います(僕もかつてはそうでした)が、結論からいうと、実はたいへん危険なので絶対にやめてください。
駆動輪だけに履かせた場合にどんな危険があるのか、実際にそれぞれの駆動方式のクルマで雪道走行した経験をふまえて紹介しますね!
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スタッドレスタイヤを装着する意味
まずは基本的な部分で、そもそも「なぜ、スタッドレスタイヤを装着するのか」という部分を考え直してみましょう。
いま言った”走行安定性”っていうのは、クルマの基本動作である”走る・曲がる・止まる“のことなんだ。
ふーん?
スタッドレスタイヤを装着する意味を考えるとき、「この”走る・曲がる・止まる“を高めるにはどうしたらいいか?」を意識すると、4輪全てに履かせる必要性が見えてくるよ。
駆動輪にだけ装着した時のクルマの挙動
冒頭でも書いた通り、駆動輪にだけスタッドレスタイヤを履かせて満足するのはとても危険です。
具体的にどんな危険があるのか、「走る・曲がる・止まる」を軸に、駆動方式別に考えてみます。
後輪駆動(FR、MR等)では
一般的にはマイナーになってきた駆動方式ですが、高級セダンやスポーツカーではこの方式がまだまだ主流ですね。
FR車、MR車など、駆動輪と操舵輪が別々になっている方式のクルマの後輪のみをスタッドレスにした時のことを考えてみましょう。
走る
後輪についてはスタッドレスを履いているので滑りにくくなっています。
後輪に押し出される形でクルマが進むので、”走る”については未装着時よりはマシになるでしょう。
しかし油断してはいけません。
クルマは加速していくと、その場に残ろうとする車体と前に進もうとする車輪によって”荷重”が後ろ側に動きます。
極端な話「前輪が浮いている」状態になってしまうんです。
ただでさえ路面を掴んでくれないノーマルタイヤが、さらに浮いてしまったら……。
右へ左へ動き放題、まっすぐ進むのも困難な状態になってしまいますね。
曲がる
クルマが”曲がる”ためにはステアリングを回す必要があります。
ステアリングを回すと、前輪(操舵輪)が動きますね。
では、その前輪が滑りやすい普通のタイヤだったら、どうなってしまうでしょうか?
後輪はしっかりと路面をつかんで車体を押し出してくれますが、曲がろうと前輪を動かしても前輪の摩擦抵抗が少ないせいで、思ったように向きを変えることができません。
進みたい方向に進んでくれないクルマ、ものすごく危険です!!
止まる
”止まる”ためには誰もがブレーキを踏むと思います。
急ブレーキをかけた経験のある方はわかると思いますが、ブレーキを踏むと車体は慣性で前方に進もうとするのに対して、ブレーキがそれを止めようとします。
すると、前方につんのめるような動きをするのは想像できますね?
このつんのめるような動きにより、前輪には”荷重”が乗り、後輪からは抜けてしまいます。
前輪は地面に対して押し付けられ、後輪は地面から浮く方向に力が加わるのです。
押し付けられている方が摩擦力は大きくなるので、必然的に、ブレーキの重要度は前輪>後輪となるわけですね。
そのブレーキにおいても重要な前輪が普通のタイヤだったら……?
考えただけで恐ろしいですね!
前輪駆動(FF等)では
現在出回っている軽自動車やコンパクトカー、エコカーなどはほとんどがこの方式です。
FF車とは、Front-engine, front-wheel-drive(エンジンが前方に積まれ、前輪が駆動する方式)のクルマのことを指します。
FF車は操舵も駆動も前輪でおこなわれる為、FR車以上に「スタッドレスは駆動輪だけでよくない?」と思われがちです。
走る
後輪駆動(FR、MR等)に比べ、こちらはやや安定感があります。
操舵と駆動を担う前輪にスタッドレスタイヤが履いてあれば、発進も直進も比較的スムーズにできるでしょう。
……調子に乗って勢いよく加速すると、グリップしていた前輪から荷重が抜けて、姿勢制御がとたんに難しくなりますよ。
曲がる
こちらも後輪駆動(FR、MR等)に比べるとやや安定します。
路面を掴んでくれる前輪に引っ張られていくかたちで曲がっていくので、後輪がノーマルタイヤでもマシな姿勢を保てます。
でもちょっと勢いよく曲がると遠心力で振り回されたツルツルの後輪が外側に大きく膨らんで、スリップしちゃったりで結局キケンです!
止まる
ブレーキを踏むと”荷重”が前に移動してつんのめるようになるのは、後輪駆動(FR、MR等)の項でお話したとおり。
しかし”荷重”の乗る前輪にスタッドレスが履いてあれば安心ね!というわけにはいきません。
クルマは1トン程もある鉄のカタマリですよね。
それがそこそこの速度で移動していて、ブレーキを踏むと前輪が止まろうとしてくれます。
このとき後輪からは荷重が抜け、滑りやすいノーマルタイヤがさらにグリップ力を失ってしまうとどうなるでしょう?
前輪は止まろうとしてくれていますが、重いカタマリである「車体」は慣性によって前に進もうとしています。
雪や氷の上を滑っているだけの後輪は、横に滑って流れ、俗に言う”ドリフト状態”のできあがりです!
さらに勢いが付いていた場合では、コミカルなアニメのようにクルクルと回転してしまうこと必至でしょう。
その先に見えるのは……言うまでもありませんね。
まとめ
2WD車の駆動輪にだけしかスタッドレスタイヤを履かせないことの危険性を紹介しました。
実際にどのような挙動をしてしまうのか、なんとなく想像できましたか?
これをしっかりと把握しておくことで、4輪すべてに履かせる必要性を頭に入れるようにしましょう。
スタッドレスタイヤを履くことで、雪やアイスバーンの路面での安定性はノーマルタイヤに比べて格段に向上します。
しかし過信せず、急加速はしない・余裕を持って減速・曲がっている最中は極力アクセルを踏まないなど、安全運転を心がけるようにしましょう。